貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
ーー

「どの部屋にしましょうか?」

薄暗い室内の中、煌々と光る四角のパネル群を見つめる男女2人組。……私達のことである。


ここはいわゆる、ご休憩がメインに設定されているホテルのロビー。あの居酒屋から更に駅を離れた場所は実はホテル街だったのだ。

あれから「それでは善は急げですよね」などと言われて、イケメンに半ば引きずられるように店を出た私達は、ホテル街へと足を向けたのだった。
繋がれた手は、相変わらず逃げられないようにする為か、指と指を絡ませた恋人つなぎである。
傍からみれば、イチャイチャしたがるお盛んなカップルだが、その実はなんでも追求したがる研究マニアとそれに付き合わされる会社の同僚という色気の欠片もない組み合わせ。

「ホテル街が近くのお店を選ぶなんて、さすが先生。うまい選択でしたね」

こちらを見て意味深に、神山透はニッコリ笑う。
違う!断じてこんな展開は予想だにしていなかったよ!
下心ありきで店を選んだように思われるのは甚だ心外である。

思い切り恨みがましい目を向けると、イケメンはフフッと笑って「冗談ですって」と楽しそうに言うのだった。

よほど「真相探求」するのが楽しみなのか、終始ゴキゲンなイケメンにドナドナされながら、相変わらず酔ってポンコツな頭の私も一応考えてみた。

『このままこの状況に流されてよいものやら』

①私は処女ではない
(と、言ってもお察しの通り経験人数は豊富ではない)

②私は現在交際相手はいない
(この何年もいないじゃないかというツッコミは不可である)

③神山透も交際相手はいない
(……と、言い張っている)

そして④、
神山透が、どうやって女性を抱くのか興味がある。


……③は気になるところだが、紺野洋子の今までの所業を鑑みれば、まあ、ギリギリ問題ないってところだろうか。

やったことはないが、いわゆる一夜の関係的なものも、どこかの漫画で見たようなセリフだが「スポーツの一種」だと思えばなんとか割り切れなくもない。
そしてなにより、性的に偏った知識しかないと見受けられるこの残念なイケメンがどんなことをしようとしているのか、なんだかんだで私も興味があるのだ。

……よし腹はくくった。
拙いながらも、先生、講義頑張っちゃうぞ!!

酔った人間の行動ほど無敵なものはない。
シラフだったら絶対に選択しない行動を選ぶ私なのだった。


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