貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
今となっては安定の、恋人つなぎで手を繋いでカフェを出て、神山透が向かったのは駅の改札口であった。

「これからどちらに向かうんですか?」
「えーとですね、今日は僕の家に行きませんか?」

行き先を訊ねると神山透はふんわり笑いながら、そう提案をしてきたのだった。

えっ?神山透の家?

「先日の出張で、美味しそうな食材を買ってきたので、よかったら一緒に食べませんか?」

驚く私に、イケメンは更に誘いの言葉をかけてくる。
美味しそうな食材というフレーズはなんとも魅力的だが、自宅という超パーソナルスペースに、単なるセフレに過ぎない私がノコノコ入り込んでも良いのだろうか。
セフレ初心者の感覚としては、自宅に行く行為というのはちょっと違うような気がするし、なんなら神山透の思慮が浅いような気がして、他人事ながら何故か心配してしまう私である。

「神山さん、そんな簡単に人を自宅に誘っちゃだめですよ。もし私がストーカー気質な女だったらどうするんですか?」

思わずそんな言葉が口に出る。
軽率に自宅に誘ったが最後、彼女面して自宅付近をウロウロして付きまとわれてはちょっとした恐怖であろう。
……いや、私はそんなことしないけどもね?

「えー山本さん、ストーカー気質なんですかぁ?でもまあ、山本さんになら執着されちゃうのも、悪くないかもしれないですねぇ」

イケメンはニヤニヤ笑って冗談みたいな事を言うものだから、なんだか心配してやったのがバカバカしくなってくる。

「なんですかそれ。そういう事じゃなくて危機感ってのを持たないといけないって話ですよ!」

全くもう!と窘めながら、結局そのまま自宅に招かれることにしたのだった。

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