貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
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思い返せば1時間前、顔色の悪い神山透から突然飲みに誘われて了承したのは、私もなんだかあの給湯室の会話を聞いて、思い出さなくていいことを思い出して、モヤモヤした気分だったからに他ならない。

「じゃ、僕もちょっと残務処理あるので、30分後に会社のエントランスで待ち合わせにしましょうか」

そうスマートに言い残すと、イケメンはくるりを背中を向けて、何事もなかったかのように自分のデスクのある部署へと戻っていった。
が、その足取りはいつもより多少ふらついているようにも見えるのだった。哀れなり。

よーし本日の残業は中止!今日はもう、飲む!!

給湯室(魔窟)に入っていく勇気はもうこれっぽっちも残っていない。カップを洗うのは週明けに持ち越しにしようっと。
そう決意した私はその場で飲み残しのコーヒーをグイッとあおると、身支度を整えに自分のデスクへと戻るのだった。 

「あれ?山本さん、コーヒー入れに行ったんじゃなかったの?」

席に戻れば隣の席の先輩、小西さんがスンスン鼻を鳴らしながら声をかけてくる。まあ、コーヒー入れて残業に備えますわ!と席を立ったのに、その香りもさせずに戻ってくれば、そんな指摘も受けちゃうよね。

「あー。なんか、ちょっと給湯室に入りづらくって……。やる気も削ぎれちゃったんで、今日はもうこれで切り上げて帰りますね。」

空のカップを机に置いて、モゴモゴお茶を濁すように説明しながら帰り支度を行えば、ふんわりとした優しげなお姉さんといったいつもの顔をしかめた小西さんが更に話を続けてくる。

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