貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
小西さんからは「噂話なんてすぐ収まるものだから。でもほんと、今日は無理しなくていいからね?」と、泣けるような労りの言葉を頂いたけれど、ここで早退なんかしたらいよいよこちらの負けである。
挫けそうになる己を叱咤激励しつつ、なんとか午後の休憩時間までやってきて、少しコーヒーでも飲もうかと満身創痍な体でヨタヨタ給湯室まで向かおうとすると、

「……山本さん?」

と、呼び止める声がした。
振り返ってみると、長い手足と栗色のロングヘアーの愛くるしいお人形さんのような女性が、こちらを見つめて小首を傾げている。

「えーと、山本郁子さん?ですよね?」

血のように鮮烈な赤い唇で、再び私の名前を呼ぶ女性。


……そこにいたのは、神山透が特別だったと言う、あの娘。
そう、紺野洋子がいたのだった。

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