私だけに甘いあなたと恋をする

響side

※※※



「――っ、はっ…」


右肘で壁を支えにしながら歩く。

喉がカラカラで苦しい。


「はぁっ…」


ほんの数メートルしか離れていないのに、自分の部屋にたどり着くまでの距離が果てしなく遠くに感じる。

ドアを開けて体を引き()るように入れ、背中でドアを押して閉めるとそのままその場に崩れ落ちた。


「…はぁーっ…」


両膝に肘を乗せ、頭を抱える。

昨日軽く血を舐めさせてもらおうと思ったはずが、気付けばほんの一滴すら惜しむように飲んでいた。

後になって後悔したはずなのに、まゆに近付いただけで血が欲しくて吸血衝動が抑えられなくなりそうだった。


……自分が嫌になる。
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