私だけに甘いあなたと恋をする
形が崩れないよう、鞄に服を入れている響ちゃんに両手で渡していると、お互いの手が触れた。

骨張った男の人の手だ。

慌てて手を引っ込めたら、渡そうとした服が床に落ちる。


「ごっ、ごめんなさい!」


怒られるか呆れられると思っていたのに、響ちゃんはフッと笑った。


「まゆ、昔の約束……覚えてる?」


「え…?」


昔の…って、もしかして結婚……?


響ちゃんとの約束はそれ以外覚えてない。

けど、もし違ってたらどうしよう。


「忘れちゃった?」


眉間に皺を寄せ少し悲しげな表情をするから、慌てて首を横に振った。
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