私だけに甘いあなたと恋をする
「はい」


学年主任の先生のところまで歩いて行くと、『頑張れ』と拡声器を渡された。

受け取る手が小刻みに震えてる。

怖くて顔が上げられない。

皆が私を注目してるのは拡声器を見つめてても分かるほど。


早く喋らなきゃ…。


文章を暗記するために散々練習してきたけど、それは本読みするような感じで。

でも、今から六百人の前で言わなきゃダメなんだ。

鼻から大きく息を吸い込んで顔を上げた。


……皆こっち見てる。


足もガクガクするし、今すぐこの場から逃げ出したい。

でも――。

皆の後ろで立っていた響と目が合って。

フッと微笑んで頷いてくれたから、頑張れる気がした。
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