私だけに甘いあなたと恋をする
「私がっ…(そば)に居たかったから…」


「……んだよ、それ…」


いつも自信たっぷりで、怖いものなんかなさそうな森くんが…。

右手で前髪をぐしゃっと握り締める。

その表情はまるで泣きそうで。


「――っ、クソッ!」


前髪から手を離すと、そのまま腕を後ろに振って壁を勢いよく殴った。


「――っ…」


ビックリして体を乗り出そうとしたら、響の私を抱き締める力が強くなって動けない。

響の顔を見ると静かに首を横に振った。

森くんの方に向き直ると、下を向いたままこっちに歩いてくる。


「森く…」


声を掛けようとしたけれど、反応がないまま私達の横を通り過ぎていった。
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