私だけに甘いあなたと恋をする
「ふーん」


追い出すこともせず、邪険(じゃけん)(あつか)わない兄貴の存在も俺にとっては楽だった。


「飯、食った?」


一つだけ向きの違うソファーに腰を下ろして聞いてみる。


「いや…」


「ちゃんと食わねーとダメだろ。兄貴、ただでさえ細いんだから」


「母親かよ」


ブハッと吹き出してようやく俺の顔を見た。

軽々しく『母親』と言えるところをみると、母親という存在に対して負のイメージはなさそうだ。


「じゃあ、晃大が作ってくれよ。腹減った」


「家政婦は?」


「今日は来ない日」


家政婦が居るとか正直羨ましいけどな。
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