私だけに甘いあなたと恋をする
「男と一回も付き合ったことなさそうな、ガードの固い女。ちょっとでも触ろうもんなら座ったままでものすごい勢いで後退(あとずさ)んの、顔真っ赤にして。ゆでダコみたいでマジ面白(おもしれ)ー」


その時のことを思い出したのか、楽しそうに笑う兄貴。


「ふーん…」


「何だよ」


「珍しいなと思って。兄貴が振り回されてんの」


「……」


ん?


突然反応がなくなった隣を見てみると、両手を流し台について項垂(うなだ)れていた。


「……やっぱりそう…だよな?」


「何が?」


何が『そう』なのか分からない。
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