私だけに甘いあなたと恋をする
「ジッと見てたけど、上の方に居るの?」


「うん」


「そっかぁー。あたしのことはいいから彼氏さんのところ行ってきなよ」


笑顔で私の両肩に手を置いて押してくれる。


「えっ!いいよ、大丈夫!」


慌てて手を振って断った。


「遠慮してない?」


「してないしてない」


あまり否定するのもおかしいかな。

でも行くわけにもいかないし。


その時――。


「試合開始五分前です。両チームの選手はベンチ前に集合してください」


場内アナウンスが流れた。


「ほら、もうすぐ始まるよ」


助け舟にホッと胸を撫で下ろしてグラウンドを指差す。

そこには真鍋くんの姿も。
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