私だけに甘いあなたと恋をする
慌てて口に手を当てて黙ったけど、言ってしまった言葉は取り消せない。


「おいで」


優しく微笑んだ響に手首を取られ、教室とは反対の方に連れて行かれる。


「……振りほどかないんだね」


「え…」


「何か嫌なことでもあった?」


冷たく当たったのに響の口調は優しくて。

前を歩く響の背中に両手を回して抱きつきたい衝動に駆られた。


「何も言いたくないなら言わなくても大丈夫だけど、まゆりの匂いがすごく不安定だったから居ても立ってもいられなくて」


「あ…」


そっか…。

響は匂いで分かるんだっけ。


「…ありがと」


「ん」


多くは喋らないけど、心配してくれたんだ。
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