私だけに甘いあなたと恋をする
あと一人…。


両手を握り締めてバッターボックスに立つ真鍋くんを見つめる。

この打席で牧園の明暗が決まるんだ。


…頑張って。


後がない分、声援も一際(ひときわ)大きくなる。

どちらかというと『声援』というよりは『悲痛な叫び』に近い。


「ストライークッ!」


審判の声に目の奥がじわりと熱くなる。

全力でバットを振りかぶる真鍋くんの姿が(にじ)んできた。

打席に立って自分が最後のバッターになるかもしれない…そんな状況で。

今、彼はどんな表情をしてるんだろう。


カキン。


当たった打球はピッチャーの目の前。

駆け寄ったピッチャーがボールを拾い一塁に投げる。
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