私だけに甘いあなたと恋をする
知らなかったわけじゃない。

何となく……予感みたいなのはしてた。

ただ相手も分からなかったし、目の前で見たわけじゃなかったから。

だから、それを現実として受け入れるには重すぎた。


『真鍋くん』


あの笑顔は俺だけのために向けられたものじゃない。

それを目の前に突きつけられて。


……そんなの、ただの言い訳だ…。

そんなもので野球ができなくなるとか。


視線を棚から下に落とすと鞄が視界に入った。

ファスナーには田川が作ってくれた野球ボールのお守りと、三輪さんが作ってくれたバットのお守り。
< 406 / 449 >

この作品をシェア

pagetop