私だけに甘いあなたと恋をする
「えっ…」


何で分かったんだろ。


「『何で分かったんだろ』って顔してる」


スッと手が伸びてきて、私の前髪に触れた。


「はねてる」


「えっ!」


やだ!

何でちゃんと鏡で確認しなかったんだろ。

後悔してももう遅いけど。


「春だっていっても夜はまだ冷えるから、ちゃんと乾かさないと風邪引くよ」


触れている手が私のおでこの髪をかきあげる。

心臓がドクンと大きな音を立てた。

響ちゃんがお盆を机に置いた時に鳴った食器の音まで耳の奥でうるさく響いている。
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