私だけに甘いあなたと恋をする
帰ろうと歩きだしたら、廊下を走る足音が近付いてくる。

すぐ後ろで止まったかと思うと、伸びてきた手に包み込まれた。

耳元で繰り返される少し乱れた呼吸音。

振り返らなくても分かる大好きな人の腕の中。


「響ちゃ……」


「しーっ」


唇に押し付けられる人差し指。

グラウンドから聞こえてくる部活動の声がエントランスで小さくこだまする。


「あのね、さっきは――」


響ちゃんの指を取り腕の中で方向転換して見上げると、優しく頬を()でられた。


「無視してごめん。でも、反応するの難しくて…」


気にかけてくれてたんだ。


響ちゃんの言動一つに一喜一憂しちゃう。
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