タイムスリップ・キス
制服に着替えた。

ここへやって来た時の、そのままの姿。

私が持って来たスマホをスカートのポケットに入れて、山田が買ってくれたスマホを返した。

「これ…、ありがとう」

「あぁ、…向こうに持って行ったところで使えねぇよな」

「うん、…たぶん」

未来(こっち)に来ていろんなことを知った。

いろんなことを経験した。

いろんなことを…

泣きじゃくった顔を整えて、山田と向き合って真っ直ぐ立った。


「「………。」」


少し上を見るように、山田の顔を見る。

「…気を付けてな」

「うん、ありがとう…いっぱい。私、山田にいっぱい迷惑掛けたけど…楽しかった、すごく」

三次元カメラの付いたスマホに、想像ばかりだったプラネタリウム、ふわふわのオムライスの作り方…


全部山田がいたから。


山田がいてくれたから。


「俺も、楽しかったよ」

ぽんぽんと私の頭を撫でた。

笑った顔が優しくて、未来に来なかったらこんな山田も知らないままだった。

「もう未来の山田とは会えないかと思うとちょっと寂しいね」

「そんなことねぇよ、会えるよ」

「え?」

「5年後、また会えるよ」 

「うん…」

5年後、今度は本当に幸せな未来で会えるように。

さぁ、帰るんだ。


私の元居た場所へ。
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