タイムスリップ・キス
伊織先輩、小西先輩…!


どうか無事でいて…!



走りながらスマホで伊織先輩のLINE画面を開いた。

タップして電話を掛けたけど繋がらない。


お願い、出て…!

お願い…っ

まだ歩道橋を上らないで…っ!


「ダメだ、繋がらない…っ」

スマホはスカートのポケットにしまって、走ることに集中した。

とにかく急いで、意地でも間に合わせるんだ。


助けるって未来の山田と約束したから…!!!

絶対私が叶えて見せるから…!!!


「ハァ、ハァ、ハァ…っ」

息が苦しいっ全速力で走り続けるのはキツい…っ


もう限界っだけど…!

諦めるわけにはいかない!

チャンスは1回しかないんだ、もう繰り返したくない!

もうみんなが苦しんでる姿は見たくない…!


あと少し、もう少しで歩道橋だ!


ほら、やっと見えてきた!



あの歩道橋だ…!!!



「伊織先輩…っ」



その時だった。

歩道橋の上から駆け下りてくる男の人がいた。

手にはスマホを持って、タタタッと駆けて来る。

全く見ていなかった。

階段を下から上って来る2人を。



—ドンッ



「小西先輩…っ!!!」

肩がぶつかった。

思いっきり小西先輩の体が揺れた。

小西先輩よりはるかに体の大きい相手の駆け下りてきた勢いで、ズルッと階段を踏み外した。

階段の上から背を向けたままの小西先輩が飛ばされるように落ちてくる。


助けなきゃ…っ


絶対に助けなきゃ…!


未来を変えなくちゃっ!!!



私しか出来ないこと…!!!



一心不乱に飛び込んだ。
 

両手を広げて、精一杯、私が出来ること。


「晴ちゃん!?」



小西先輩を受け止めるんだ…!
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