タイムスリップ・キス
「そうとなったらさっさと帰るかな~」

「あ、ねぇ山田…!」

「ん?」

今日もわざと時間をずらした。

あの日みたいに、だけど今日は伊織先輩たちから避けるためじゃなくて…

「山田に…言いたいことがあるんだけど」

教室に2人きり。

2人になるように。

帰るのを遅らせた。

無理やりに山田を引き留めるようにして。

「何?」

しーんとする教室、山田を前にしたらドキドキと心臓が鳴り始めた。


思い出しちゃう、あの時のあれ!

キッカケとは言え、2回もしちゃったし…!


「あの…」

心臓うるさいっ


言いたいことがあるんだから言わせてよ!静かにしてよ!


何か言おうかいろいろ考えてた。

でもいざこの空気になると言葉が出て来ない。

「………っ」

「…伊織先輩と小西先輩を別れさせるのを手伝えと?」

「はぁ!?」

想像してなかった山田の言葉に変な声出ちゃった。めちゃくちゃしてた緊張もふわっと体の中を抜けてくようだった。

「思ってないよそんなこと!」

「言ってたじゃん、そんな言いにくそうにしてるから絶対これだろと思ったのに」

「もう思ってないし!それは過去の私!」

「過去って昨日だろ」

そうだ、確かに。
私にとってはもう結構前な気がしてたけど山田にとっては昨日の話なんだった。


あれ?

だとしたらすごい切り替え早いと思われない?

昨日の今日で私何言おうとしてるの…?


じっと山田の顔を見た。

「なんだよ」


でもきっと未来の私もこんな気持ちだったんだと思うんだよね。


もう抑えきれなかったんだよ。




この気持ちが。
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