タイムスリップ・キス
「女子高生なのに古い携帯使ってるんだね。5年前のモデルじゃん」

「え…?」

新しくしたばっかだった。
もらったお年玉で年明け早々機種変したばかりの、なんでも対応できるようにした1番新しい機種。


5年前…?


スマホの表示画面も2027年…、5年後。


やっぱりこれは不具合じゃない…の?


「あの、今って何年ですか!?何年の何日ですか…!?」

「今日?今日は2027年の1月7日かな」

“未来に行けたらいいのに”

軽い気持ちで言ったあの言葉…!

まさか、ほんとに、私…


え?


5年先の未来にタイムスリップしてるーーーー!!?


待って!ガチで!?

本当にそんなことあるの?

いや、でも妙に納得っていうか…
この状況絶対一瞬でどうにかできるものじゃない。

それに目の前にいる山田だって!

え、山田なんだよね!?


あの山田ー…っ


「………っ」


フリーーーーーーズ。

両手で頭を抱えた。

でも何も解決策は浮かんで来こなかった。

てゆーかこの場における解決策って何?


お、思い出してみよう!

なんでここへ来ちゃったか、どうしてここに飛ばされちゃったか…

確か伊織先輩にフラれて、山田に愚痴ってて、校舎裏の自販機で紅茶買って、花壇のブロックに乗って…

そこから記憶が曖昧だ。

何があったか思い出せない。

頭をフルに回転させてもテンパって何も出て来ない。

「ねぇ本当に大丈夫?もしかして転んで頭打ったとか?どっか痛いとこあるの?」

心配そうに山田(大人)が聞いてくる。

「ぜ、全然!全然!痛いとこないです!!」

ぶんぶんと首を振った。

実際痛いところなんかない。

そんなことより事が重大過ぎて、私にも何が何だか…っ

「そろそろ帰りなよ、冬は日が暮れるのが早いんだから」

「………は、はい」

そうだ、鞄…机に置きっぱなしだ。

教室まで取りに行かなくちゃ。

遅くなったらお母さんも心配するし早く帰らないと…っ

てどこに帰ればいいの!?私!!?

こっちの世界にも私の家ってあるよね?

でも帰ったところで、私ってわかるの!?

過去からやってきましたー♡って言うの!?


おかしいでしょ!!!


ダメだ、自分で自分へのツッコミが止まらない…

「どうしたらいいんだろう…」

完全にキャパオーバー、つい声が漏れた。

とりあえず、どっか…
漫喫とかネカフェとか、行って1回落ち着こう。

それからゆっくり考えよう。

そうしよう。

「…失礼しました」

くるっと方向を変えて歩き出す。
ここでうだうだしててもしょうがないし。

「…あのさぁ、もしかして家出?」

「………。」

「もう暗くなって来たのにどこへも行く感じしないし、家に帰りたくない理由でもあるの?」

どちらかと言えば帰れる理由がないんだけど。

帰れる場所がないんだもん。

「俺でよかったら、話聞くよ?」
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