タイムスリップ・キス
今日も“あいつ”のスウェットを借りて眠る。

ベッドの下に布団を敷いた山田はすでに夢の中でスヤスヤと寝息を立てていた。

昨日のクッションはきっと寝にくかったよね。
今日もベッドは私に貸してくれて…

「………。」

何度も目を閉じてはみたけど眠れそうになく、じっと天井を見つめていた。

不思議だ、普通に夜が来て朝が来る。


当たり前の繰り返しの中で私はどうしてるんだろう。


5年前の世界に私はどうなったのかな?
いないのかな?


体ごとこっちに来てるってことはそう考えるのが筋だし、理屈も通る。


そしたらあの時一緒にいた山田は?
どうしてる?焦ってるよね?


急に目の前で人が消えたとしたら…

5年前の私は行方不明になってるのかな。

これは考えても考えても私だけでは答えが出せない。


…というか、その記憶は“今の山田”の中にないの?

過去から来てるんだもん、山田だって同じこと経験してるはずだよね。

あの日起きたこと、覚えてたりしないの…?


「……。」

がばっと起き上がった。

1つ思うことがあったから。

考えても考えても私だけでは答えが出せない、私だけでは。


そうだ、やっぱり会いに行こう。

最初にそうすべきだったんだ。


私のしなきゃいけないことー…
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