タイムスリップ・キス
1人の夜の公園は昼間と違ってすごく静かだ。

より一層寒さは増して、灯りだって最低限点いているだけ。

怖いと言う感情さえ浮かんで来なかった。

ブランコなんて、何年振りに乗ったっけ。
ギシギシと軋む音が耳障りで、やめておけばよかったと思った。

このブランコは5年前と変わってないのになぁ…

なんで私はここにいるのかな。

この場違いな世界に。

どうして来ちゃったんだろう。


伊織先輩と小西先輩を別れさせたら元の世界に戻れるの?


そんな保証全くないのに…
不安ばかり募っていく。

この暗闇と一緒に私も消えたりしないのかな。


なんでここへ来ちゃったんだろう?

2人を別れさせようなんて卑怯なこと考えたから?

バチが当たったの?

ずるいこと考えた私に下った罰だったの?


俯くしかなかった。

こんなに寒いのに体は震えもしない。

あの角を曲がったら、その隣にあるはずだった。

変わらないそのままの道だったのに。



目に映らなかった、私の家。



何もなかった。

まっさらで跡形もなくキレイさっぱり…


未来(こっち)の世界に私はいなかった。


私がここに来た理由って本当は何なの?


ぽろぽろと涙が溢れる。

真っ暗で何も見えない。


私このままどうなるんだろうー…



伊織先輩に会いたい。



名前を呼びたい、声が聞きたい、顔が見たい。

何気ない話をしながら学校へ続く坂道を、もう一度伊織先輩と一緒に。



会いたいよ。



伊織先輩、今どこにいるんですかー…?
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