タイムスリップ・キス
「てゆーか山田、料理とかできたんだね」

「一人暮らし2年もしてりゃできるっつの」

「そっか、高校卒業してから一人暮らしなんだ」

「おー、大変だぞ一人暮らし」

私には考えられないな、1人で暮らすとか。

まっさらだっら私の家、なんで私はいなかったのかな…

パクッとトーストにかぶりついた。

「てかさぁ、晴は気付かなかったわけ?」

「え?」

「最初俺のこと見て、クラスメイトの山田だって」

「気付いてたよ!ちょっと…大人になってたけど、すっごい変わってるとかはなかったし!」

「え、気付いててあんな感じだったわけ!?超他人だったじゃん」

すっかり空になった山田のお皿の上にはトーストのカスだけが残っていた。
それを見て私もせっせと胃の中に詰め込んだ。

「気付いてたけど、信じてもらえるわけないし。こんなめちゃくちゃなこと…」

「俺めっちゃパス出してたのに?」

「パス?」

「明日学校は~?とか、そしたら微妙な返しして来るし」

あれは試されてたのか…純粋に心配されてたのかと思ってた。

そんなわかりにくいパス出してこないでよ。
サッカー下手だなきっと、知らんけど。

「“筋肉番長”の話だってしたのに」

「まだ好きだったんだねあれ」

「晴、5年前とおんなじ返事してたな!」

ケラケラと山田が笑った。

「私だって同じこと思ってたよ!おんなじこと言ってくるんだって!」

「じゃあその時言えよ」

「言える状態じゃなかったし!」
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