タイムスリップ・キス
山田に誘われて街に出かけた。
駅前のお店は軒並み変わっていて、目が回るほど目移りした。

「あ、でもスタバはまだある!」

「スタバはなくならないだろ、今でも長蛇の列だぞ」

「へぇー、スタバは変わらずすごいんだね」

前を通りながらチラッとメニューを見てみたけど、知ってる名前が並んでいてちょっとだけ安心した。私の定番のメニューもそのままあった。

「あれ、ご飯どこ行くの?駅過ぎちゃうけど」

「おー、その前に行きたいとこあって」

「?」

山田の後ろを見失わないようにあとをついて歩いた。

駅前に人が多いのも変わっていなくて、ていうか未来(こっち)のが人は多い気がした。みんなせわしなくどこかに向かっている、みたいに。

「やっぱさぁ、こないだみたいなことあったら心配だからさ」

「こないだみたいなこと?」

「あった方がいいかと思って」

「え、何を?」

ピタッと立ち止まったお店の前、何かと思ってガラス越しに覗いてみた。

「スマホ!ないと不便だろ?」

ズラーっと規則的に並べられた見たことのないスマホには興味をそそられた。

私の持っていたものと変わってないようでどこか違う、言っても流行りもの大好き女子高生気にならないわけがない。

「どれが欲しい?テキトーに選んで」

「え?」

「なんだよ、その顔」

センサーで感知された自動ドアが開く。スタスタと山田が携帯ショップに入って行った。

「か、買ってくれるの!?」

「そのつもりで来たんだけど?」

「だって高くない…?スマホとか、高いじゃんっ」

「あー…晴が持ってるのよりだいぶ安いけどな、今のは」

「そうなの!?」

山田のあとをついて入った携帯ショップ、気になってチラッと近くにあったスマホを見てみた。

「…安」

「な、だいぶ安いだろ?」

あれ、私が買ったの10万以上したけど?
必死に今分割払いしてるのに、2万で買えるって何???

「あれから携帯業界は切磋琢磨の技術改新を成し遂げられて今やスマホを買う時代じゃなくて買ってもらう時代なわけ」

「なんで急に難しい言葉使い始めたの?」

「その分、月の携帯料金は上がったけど」

「意味ないじゃん!」

「それが時代の変化だな~」

…それはいいんだか悪いんだか。
でもそうやって時代は変わっていくのかな。急に未来感じちゃった。

「で、晴どれが欲しい?」

「…本当にいいの?私お金ないよ」 

「おー、俺の気が変わらないうちにな」

「でも…っ」

「じゃあキッズケータイにしとくか?見守り機能も付いてるし」

「スマホでお願いします…!」
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