タイムスリップ・キス
「よし、メシでも作るか!」
そっと私の顔を上げるように起こして、潤んだ私の瞳に笑いかけた。
「オムライス!晴、好きだろ?」
「…好き」
「今日は俺が作ってやろう!」
そう言って山田がキッチンに立つ。
段取りよく鶏肉や玉ねぎ、ニンニクを包丁で切り始めた。
鼻歌交じりにご機嫌に、そんな姿をただ隣で見ていた。
私がやるより全然早く進んでいくオムライス作りはすぐにいい香りがして来た。
「やっぱ卵はふわふわじゃね?」
「…私も一応ふわふわ目指してたんだけど」
「へぇ」
「…全然出来てなかったけど!」
棒読みの“へぇ”がいつも通りの山田で、すぐにケラって笑った。
山田とはいつもこんな感じだよね。
すぐにいつも通りにしてくれるんだ。
「ふわっふわにするコツがあるんだよ」
「コツ?」
「牛乳を入れるのは定番なんだけど、そこにマヨネーズ入れんの」
「マヨネーズ!?味変わっちゃわない!?」
「焼いたら全然わかんねぇ」
冷蔵庫から出したマヨネーズをふにゅんっとテキトーに入れ、菜箸で混ぜ始めた。
マヨネーズ入れるなんて初めて聞いたんだけど…、マヨネーズ味のふわふわ卵になったりしないのかな?
それはそれでおいしいとは思うけど。
バターを流し込んだフライパンの上にマヨネーズ入りの卵が流された。
めっちゃくちゃいい香りが立ち込める。
あっという間に出来上がった。
私が作るひしゃげた卵のオムライスとは大違いのふわっふわのお店に出て来そうなオムライスが目の前に出された。
「さぁ食え食え!」
「…いただきます」
いつもの小さな丸いテーブルで向き合って、手を合わせた。
渡されたスプーンで一口すくって、口まで運ぶ。
「おいしい…!」
ふわふわして、トロトロして…
私の作るのと全然違う!
でも絶対マヨネーズだけのせいじゃない!
…山田はよくあんなちっぽけなオムライス毎日食べてくれてたな。絶対山田が作った方が何百倍もおいしいのに。
「だろ?俺は昔からオムライス作らせたら天下一品なのよ」
「…そーなんだ」
「さすらいのオムライサーって呼ばれてんの、知らねぇ?」
「え、なにそれ」
「あ、そっか。過去から来たんだもんな」
山田が2リットルのペットボトルを軽々片手で持ってコップにお茶を入れてくれた。コポコポと音が聞こえる。
「…しかもダサいし」
「ダサいってなんだ!」
口いっぱい頬張りながら食べる山田、たまにぶつぶつ言いながら、オムライシストのがよかったかなとか、響きは悪くなかったとか、本当くだらなくて。真剣な顔してそんなこと言ってるから。
思い出した、山田はいつもこうなんだって。
だから笑っちゃったの。
「おい、笑ってんなよ」
「どっちも変わんないし!」
「晴はオムライセンスがわかってないな!」
「そんなの誰もわからないよ!響き気に入ってんじゃん!」
全部わざとでしょ。
励ましてくれたんでしょ。
今目の前で笑ってる山田を見て、少しだけ未来の私が羨ましく思えた。
そっと私の顔を上げるように起こして、潤んだ私の瞳に笑いかけた。
「オムライス!晴、好きだろ?」
「…好き」
「今日は俺が作ってやろう!」
そう言って山田がキッチンに立つ。
段取りよく鶏肉や玉ねぎ、ニンニクを包丁で切り始めた。
鼻歌交じりにご機嫌に、そんな姿をただ隣で見ていた。
私がやるより全然早く進んでいくオムライス作りはすぐにいい香りがして来た。
「やっぱ卵はふわふわじゃね?」
「…私も一応ふわふわ目指してたんだけど」
「へぇ」
「…全然出来てなかったけど!」
棒読みの“へぇ”がいつも通りの山田で、すぐにケラって笑った。
山田とはいつもこんな感じだよね。
すぐにいつも通りにしてくれるんだ。
「ふわっふわにするコツがあるんだよ」
「コツ?」
「牛乳を入れるのは定番なんだけど、そこにマヨネーズ入れんの」
「マヨネーズ!?味変わっちゃわない!?」
「焼いたら全然わかんねぇ」
冷蔵庫から出したマヨネーズをふにゅんっとテキトーに入れ、菜箸で混ぜ始めた。
マヨネーズ入れるなんて初めて聞いたんだけど…、マヨネーズ味のふわふわ卵になったりしないのかな?
それはそれでおいしいとは思うけど。
バターを流し込んだフライパンの上にマヨネーズ入りの卵が流された。
めっちゃくちゃいい香りが立ち込める。
あっという間に出来上がった。
私が作るひしゃげた卵のオムライスとは大違いのふわっふわのお店に出て来そうなオムライスが目の前に出された。
「さぁ食え食え!」
「…いただきます」
いつもの小さな丸いテーブルで向き合って、手を合わせた。
渡されたスプーンで一口すくって、口まで運ぶ。
「おいしい…!」
ふわふわして、トロトロして…
私の作るのと全然違う!
でも絶対マヨネーズだけのせいじゃない!
…山田はよくあんなちっぽけなオムライス毎日食べてくれてたな。絶対山田が作った方が何百倍もおいしいのに。
「だろ?俺は昔からオムライス作らせたら天下一品なのよ」
「…そーなんだ」
「さすらいのオムライサーって呼ばれてんの、知らねぇ?」
「え、なにそれ」
「あ、そっか。過去から来たんだもんな」
山田が2リットルのペットボトルを軽々片手で持ってコップにお茶を入れてくれた。コポコポと音が聞こえる。
「…しかもダサいし」
「ダサいってなんだ!」
口いっぱい頬張りながら食べる山田、たまにぶつぶつ言いながら、オムライシストのがよかったかなとか、響きは悪くなかったとか、本当くだらなくて。真剣な顔してそんなこと言ってるから。
思い出した、山田はいつもこうなんだって。
だから笑っちゃったの。
「おい、笑ってんなよ」
「どっちも変わんないし!」
「晴はオムライセンスがわかってないな!」
「そんなの誰もわからないよ!響き気に入ってんじゃん!」
全部わざとでしょ。
励ましてくれたんでしょ。
今目の前で笑ってる山田を見て、少しだけ未来の私が羨ましく思えた。