タイムスリップ・キス
想像より大きな建物で下から上まで、じぃーっと時間をかけて見た。

出来てる!本当に出来てる!

“5年前から出来るって噂はあっただろ?”

噂じゃなくなってる!!

前に山田がスマホで見せてくれたけど、実物見ると全然違った。

大きい!すごい!カッコいい!
現実になってる…!

「ほら、いつまで見てんだ。入るぞ」

中に入っていく山田を追いかけるように続いて入った。

チケットを2枚、隣の席で。

プラネタリウムは5階だった。

「まだちょっと時間あるから他のも見てくか」

「うん、見たい!」

もらったパンフレットを見ると1階と2階は天文知識や現象についての展示施設になっているみたいで雨の仕組み、雪の降り方、雷が起きることについて。科学の授業みたいだった。

「ねぇねぇ、放電ラボだって!4階にある!電気の光りを体験できるんだって、すごくない!?」

ついつい夢中でハシャいでしまった。

「3階はなんだろ?あ、北極体験!これも楽しそうだね!山田は何がっ」
 
相も変わらず、周りを見ることを忘れて後ろにいた山田の方を振り返ろうとくるっと回った時だった。

「晴、危ないからっ」

グイッと山田が腕を引っ張った。

「!?」

そのまま引き寄せられ、ピタッと山田の胸にくっ付いた。

「ぶつかるだろ、前見て歩け」

「…ごめん」

興奮しすぎて全然気付いてなかった。

目の前を歩く人のこと全く見てなかった。パンフレットに夢中で…、危うくぶつかるところだった。


ドクン、ドクン、と波打つ音が聞こえる。私の心臓の音。


あれ、なんだこれ…?

何の音…?

どうしてこんなに強く響いてるの…


「晴?」

「え、あ、ごめん!気を付ける!今度は!」

サッと前を向いた。

たぶん今顔見られたらまずい。

なんかまずいと思う。

「んじゃあとりあえず、北極体験でも行く?」

「行くー!」
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