タイムスリップ・キス
45分の公演が体感5分だった。
なのに満足感と高揚感はこの上なく満たされていた。

「めっちゃくちゃよかったね、プラネタリウムっ!!!」

いち早くこの思いを伝えたくて、明るくなった瞬間山田に話しかけた。この止まらない思いを聞いてほしくてしょうがなかった。

「臨場感すごかったし、本当に空の中にいるみたいだったし、流星群のシーンめちゃやばかった!あと…っ!」

ここまで一息もせず喋って気付いた、山田が右手で顔を隠しながら笑ってた。くすくすなるべく声を出さないように、大人の配慮ってやつで。

「…笑いすぎ!」

ばしっと叩いてやった。 

そりゃ山田が私を子ども扱いする気持ちも、自分で言うのもなんだけどわかる。

こーゆうとこだ間違いなく。

「それだけ喜んでくれたらよかったわ」

「………。」

「プラネタリウムより満足!」 

…何それ。勝手に満足しないでほしい。

「ほら、いくぞ」

スッと自然と出された右手。

きっと山田は私じゃなくて、未来の私だと思って手を差し出したんだと思う。

だけど、…その右手を握り返したくなったから。

手を取ってしまった。
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