タイムスリップ・キス
「あ、あったあった!」

お目当てのものが見付かったのか吸い込まれるように私がお店に入っていった。置いてかれないよう駆け足で追いかけた。

「これどう?」

1着のワンピースを手にして私の体に当てた。
胸元には大きなリボン、袖がきゅっと絞られたレトロ風な杏色のワンピース。

「…かわいい」

「でしょ!自分の好みぐらいわかってるからね~、いくら5年後の私でも!」

自分には変わらないんだからそれはそうだと思うけどー…

チラッと見えた値札に二度見した。

1回そのワンピースを手に取ろうとしてすぐにやめた。

「高っ!!」

想像より高かった。

山田からもたったお小遣いの10倍くらいだった。

「そうなの、だから高校生の頃は買えなかったんだよね」

「あたりまえだよ!」

「でも私今バイトしてるからさ、ちょっとくらいなら買えるの」

私が返したワンピースをもう一度その私に渡した。

「昔私が着たかった服を過去の私に着てもらえるの、夢叶った感じするじゃん!」

早く早くと腕を引っ張られ強引に試着室に入れられた。

デザインは確かに可愛いし、好みだし、着るぐらいは…ここ最近ずっとパーカーにGパンだったし、ね。
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