タイムスリップ・キス
「…そうだよね」

伊織先輩が悲しそうに微笑んだ。

「そんなわけないもんね。ごめんね、変な事言って」

必死に首を振った、声が出なかったから。
だけど悪いのは私だから、今なら“私”が会わないでって言った意味がわかる。

「晴ちゃんが来てくれないのも関係してるのかなって、考えすぎちゃった」


そーいえばどうして未来(こっち)の晴は伊織先輩にも会いに来ないんだろう?


これだけはまだわからないまま。

せめてお線香上げに来てあげなよ…、小西先輩に。

「…その晴、さんって人は一度も来られたことがないんですか?」

「ううん、一度だけあるよ。優月のお葬式の時ね」

それはもう随分前にってことかな、それ以来会ってないなんて。

「あの時、晴ちゃんちょっと様子がおかしくてね」

「おかしい?ってどんな風にですか?」

「“私のせいで”って叫ぶように泣いてた」

私のせいで…?
ってどうゆう意味だろう。

私は何をしたの?

私は何を抱えているの?

「優月は事故だったし、晴ちゃんのせいなわけないんだよ。なのにどうして、あんなことを僕に言ったのかわからなくて…」

「……。」

「僕はただ、優月だって…晴ちゃんに会いたいだけなんだ」

じっと小西先輩を見つめていた。

「優月も生きてたらきっと晴ちゃんと仲良くなったと思うから」

それも伊織先輩の純粋な気持ち。


恋ではなかったけど私を想ってくれていた伊織先輩の気持ち。


伊織先輩が立ち上がった。

溢れた涙を拭きながら。

「今日は優月の月命日なんだ。なっちゃんと来られてよかったよ」

「いえ…」

「5年と1ヶ月も…、経っちゃったね」



………え?



今何て…



一瞬上手く聞き取れなかったのかと思った。


そうだ、まだきちんと聞いてなかったよね。

でもこんな偶然あるのかな。

でも聞き間違いかもしれないし…っ。


ゆっくり立ち上がり、恐る恐る口にした。

「…い、いつ…亡くなられたんですか?」

ドッドッと波打つ心臓。

今にも破裂しそうに息が詰まる。

伊織先輩が私の方を見た。



「2022年の1月7日」



私のタイムスリップした日だ。



「…あの日の事は忘れない。一緒に学校から帰る途中だった、歩道橋をの階段を上っている時に前から来た人とぶつかって…」

え、待って。

どーゆうこと?

それって、だって…っ

「僕は自転車を引いていてすぐには助けられなかったんだ…」

あの日私は一緒に帰る伊織先輩と小西先輩が見たくなくてわざわざ校舎裏の自販機にいた。

その時間はハッキリ覚えてる、だってあの時スマホで確認したから。



タイムスリップした時間を…!



「もうすぐ日が暮れる5時過ぎのことだった」



16:45 私が未来(こっち)へ来て見たスマホの画面に映し出されていた時間。



私がタイムスリップしたすぐ後に小西先輩が階段から落ちたってこと?

なんで?

どうして…!?

これは偶然なの?

それとも必然?

…なの?



“2人を別れさせて、私が付き合うの♡”




私が願ったから…?
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