きみと繋げた雪明かり
「だからさ———」
さっきまである程度距離を置いて話していたのに、いつのまにか透子さんが目の前に来ていた。
「———あたしみたいに、あんたの大事な人、これ以上近付くようだったら傷付けてやるから」
全身が倦怠感で襲われる。一瞬すべての視力がなくなったかのように、暗闇に包まれた。
「…賢い夜宵ちゃんだったら、これが誰のことかわかるよね?優等生の生徒会長くんが大切なんでしょ」
「そ、れは……っ」
「夜宵ちゃん、平和主義だよね。自分以外が傷つけられるなんて、嫌だよね?」
透子さんのその言葉になにも言えず、黙り込んでしまう。
たしかに、岬木くんやその他のみんなが傷つくなんて絶対嫌だ。でも、私は彼のことが好きなんだ。
どう誤魔化したり隠したりしても、頭の中では好き、と正直に認めてしまう。
「……じゃあね、またそのうち会えると思うよ」
透子さんは最後、妖艶に笑った後さっきの雰囲気が嘘のように、駅へ駆け出してしまった。
岬木くん、ともえちゃん、杉田くん。そのほかにもたくさん、友達とまでは言えないかもしれないけれど、今まで私と関わってくれた人。
そんな大事な人たちを誰も失いたくない。岬木くんとこれからもいい関係でいたい。
透子さんは、おそらく私がそう考えることをわかっていっていると思う。全ては知らぬままに透子さんの手の上で操られていたんだ。
「は……ぅ…」
まるでタイミングを見計らったように、急に体のしんどさに襲われる。
立つのもままならなくなってきたので、そばにあったベンチにぐったりと倒れた。
私は、どうしたらいいのだろう。耐えられない。結局は誰かが犠牲にならないといけないなんて、絶対に嫌だ。
透子さんだったら口だけじゃない、絶対に行動する。本当に傷害事件なんかが起きてしまうかもしれない。
でも、それくらいあの子を愛していたんだ。
ベンチに座っても、しんどさは薄れることなく、それこそひどく、目の前がぼやけてきた。
あ、失神する。そう思った時には目の前が暗闇に包まれていた。
ねぇ、私はどうしたらよかったんだろうね、凛子。
私も、あなたのことが大好きだから——