きみと繋げた雪明かり


***



「最近やすみ多いよなぁ…」


横にある空席を眺めてポツリとつぶやく。


あの謎の電話から1週間。凛子が学校に姿を見せることはなかった。


あの電話の真実を聞こうと思ったのに、これでは聞けない。



あんな寒い時に出たんだから、風邪でも引いたのかな。と思って過ごしていたのだけど、さすがに1週間となる心配になってくる。


私がそう思っていると先生が「…おはようございます」といつもとは真逆の雰囲気で入ってきた。


いつもは気だるげそうな感じの先生だけど、今日は気分が良くなさそうだ。



「…皆さんに大事なお知らせがあります」


一体どうしたのだろう。思ったけれど、その思いは次の瞬間打ち消される。



「……橘さんが亡くなりました」



…………え?


一瞬、時が止まったように感じた。でも、それは周りも同じ。


しんと静まった後、すぐにえ?と困惑の声が教室中を駆け巡る。



……りんこが?亡くな……



嘘だ嘘だ嘘だ、と頭の中で思い込む。けど、これは現実だ。


「………っ、」


「星野さん……!?」



嘘だ。あの凛子がそんなはずない。いつでも笑顔で気遣い出来て優しい凛子が。


私はいつのまにか教室を飛び出して、どこか人気のない場所に向かっていた。



「はぁ、はぁ、はぁ……」



『ねぇ、夜宵!次の数学、体育になるてやったわ!』


『うわ、なにこの怪物。夜宵って案外家庭科苦手?』


『私さ、この世にいる全員が笑顔で過ごせる世界になったらいいと思ってる』



急に頭を巡らす凛子の言葉。



そうだよ、なんで。笑顔で暮らせたらいいって言ってたじゃん。凛子自身が笑顔じゃなかったらなにも始まらないんだよ?
< 168 / 206 >

この作品をシェア

pagetop