有り ふれた 人生
尚 久
由季の友人の千秋さんが
花の納品にきていたが
倒れそうになり驚いた。
何度もお礼を言われて
律儀な方だと思った。
本当に、その時は、それだけ
妻の由季を愛していたから······
帰り際に
千秋さんより
「改めてお礼をさせて下さい。」
と、紙を渡された。
そこには、携帯番号が
かかれていて
「連絡お待ちしています。」
と、記載されていた。
なんだか申し訳なく思い
連絡をして
お会いすることに。
あまり自由になる身ではないが
美味しいと有名な焼き菓子を
頂いた。
カフェでコーヒーを頂き
カフェを出ようとしたら
千秋さんがキョロキョロと。
「どうされましたか?」
と、言うと
急に涙をためて
実は·······と。
千秋さんは、
俺に迷惑かけるからと
言ったが由季の友人だ。
力になりたかった。
「付き合っていた男性とは
合わないと思い
別れを切り出したら
酷く罵られて
嫌がらせを受ける様に
なってしまい。」
と、怯えながら話す千秋さんに。
「警察に相談したの?」
「由季にも話そうか?」
と、言うが
「返って何をされるか怖いし
由季に何かあっても大変だから。」
と、涙をする千秋さんに
できるだけ送迎をしたり
一人で出歩かないように話す。
そんな数日が過ぎた時
由季が和食組合の
奥様方とお義母さんと
慰安旅行へと出掛けた。
その日は、千秋さんのご両親も
不在で千秋さんの買い物に付き合った。
帰り際に
「帰らないで。」
と、泣く千秋さんが
あまりにも儚く抱いてしまった。
同じ年だが
初々しい由季と違い
色気のある千秋さんの
体に溺れて行った。
由季がやらないような事も
奉仕してくれる
千秋さんに
身体は、反応していく。
千秋の身体に溺れ
合えば抱きあう日々
その日も激しく抱き合っていた······
いきなり殴り飛ばされて
ベッド下へ
気づくと
義母の怒りの顔が見え
直ぐに着替えて
千秋の実家にくるように
言われた。
俺は、一文無しで
つるやを追い出され
実家へと帰った。
千秋の実家は
店を畳んで多額の
慰謝料と迷惑料を支払って
鎌倉を出たらしい。
俺は······
由季に合う事も
許されなかった。
京都の実家からも
絶縁されて
俺は、生きる屍になっていた。
なぜ····あの時·····
どうして······
と、思わずにはいられない。