溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。(漫画シナリオ版)
ざわりと胸を揺らす真理。



「凪!」



大きく叫ぶ。

(真理は? 
凪はそう言おうとしたの?)

(やめて。言わないで)


自分の胸を掴む真理。



(ううん……聞かないで)

視界に映るのは,アスファルト。

(何故なのか私にも分からない。でも……)



「凪,帰ろう」



(分からないからこそ,ちゃんとしなきゃ)

努めて静かに口にする真理。

感情の渦に,えずきそうなのをこらえる。

(もし本当に聞かれたら,どうしたかな)

(私が凪をどう,なんて,考えたこともなかった)

(凪は私の何? 私はいつもいつも……何に,どうして傷ついているの?)

無理矢理に笑みを浮かべる真理。

凪は肩を竦める。

最初から分かっていた様に,頷く。

信号が青に変わる。



「うん。そうだね。まだ…か」


凪が切なく溢す。

発進する自動車の音に,気をとられる真理。


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