溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。(漫画シナリオ版)
真理の脳裏を過る,嫌な予感。

(私の勘は,よくあたる)

「待っ」

お母さんの背中に手を伸ばす真理。

ーバタン

ドアは真理の目の前で閉まる。

ドアの先から響く,お母さんが小走りする音。

(……これ,は……)



「凪!」



(分かってる,八つ当たりだこんなのは)

凪を涙目で睨む真理。



「行っちゃったね」



あははとでも言うように凪はあっけらかんと返す。



「っあれ! 絶対置いていかれたよっ私!」



(また,だ。ひどい。次はって言ったのに)

肩でぜぇぜぇと息をする真理。

あっと,口に手を当てる。

そして,取り繕うように両手を顔の前でクロスさせる真理。

(何を取り乱して……私らしくもない)

戸惑いに瞳を揺らす。

(子供っぽいと思われた?)

凪の顔色をうかがう真理。

そっと凪が真理の頭を撫でる。

落ち着いて大きな手のひらに身を委ねる真理。

凪がふむ,と言う。



「真理は,猫みたいだね」

「そうかな」

「うん」



(どんなところが?)

首をかしげる真理。

それ以上言わない凪。

(それよりも,だ)
< 15 / 27 >

この作品をシェア

pagetop