溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。(漫画シナリオ版)
「真理,お待たせ! 帰ろっか」



笑顔で片手を差し出す凪。

それを誤魔化ように,真理がその手を凪の手を取る。

自分とは関係無い風景を見ているような錯覚。

顔を左右にふった真理。

視界に映る,自分を睨む1人の先輩女子。

はっとして,顔を反らす。

(また……)

真理に気付き,凪が素早く振り向く。



「次僕の真理にそんな目を向けたら,君とは友達でいられない」



低い声。

鋭い視線を向ける凪。

真理がうつむく。

(どうせ友達になりたいとは,あの子も思ってないよ,凪)

(ほんとは,分かってるんでしょ?)

自分を鋭く見つめた先輩を見る。

(やっぱり,そうだ)

初めて見る人だと,気付く真理。

(凪は,私が蔑ろにされると,怒る。知らなかったんだろうな)

(だってまだ,私がこの高校に入学して,1月もたってない)

表情なく,先輩を見つめる。

他に出来ることのない真理。

(でも,他の女の人だっておんなじ)

敢えて真理から視線を外している先輩。

疚しさを隠すように握られた手首。

(ただ知っているだけで,巧妙に隠しているだけで。皆,思っていることはあの人と同じ)

真理を容赦なく睨んだ先輩が,泣きそうな顔をする。

どうして,と言葉が真理の頭に届く。

(そんなの,私が知るわけない)

凪が手を引いてあるきだす。

それについて,真理も歩く。

本物のように,凪を想う人の気持ちが,頭に流れる真理。

(なんであんな釣り合わない子が)

(想い合っているわけでもない,たまたま幼馴染みに生まれた子が)

(そんなの,私が1番分かってる)

興味深そうにチラ見する,側を歩く学生。

(私が,1番聞きたい)

風がサッと流れる。

誰も口にしない言葉で,耳に手を持っていく真理。



「真理?」



凪が真理を覗き込む。

はっと顔をあげる真理。

(もう,家)

学校から遠く離れた見慣れた景色に,呆然とする。



「ごっごめん…っ」



別のことにも,気がつく。
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