溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。(漫画シナリオ版)
声をひっくり返して凪に言う。

(やだっ…私)

自分の行動に驚く真理。

(いつから……)

目に映るのは,固く凪の手を握りしめる自分の手。

慌てて力を抜く真理。

見上げると,凪は珍しく戸惑った顔をしている。

視線を真下に落として,握られていない手で口元を隠す真理。



「……嬉しいから,いい」



凪らしくない,はっきりしない喋り方。

不思議になって,真理がチラリと見上げる。

(鼻でも痒いのかな)

凪が真理と似たポーズで,真理から顔を背けている。

真理と違い,唇に当てているのは甲の方。

(凪,変)

変わった凪の様子に,真理が首をかしげる。

(私が凪と同い年だったら,その理由も分かるのかな)

(変なんて大雑把な感覚じゃなくて,もっと的確に理解できるのかな)

石の壁を見ながら,結論に行き着く。

(分からない。だってせっかく1つ年を取っても,その時は凪も1つ年を取るから)



「真理。今日は,やっぱりもう少し帰るの止めとこっか」



凪が言う。



「え…?」



困惑しながら,真理が凪としっかり目を合わせる。

(帰らないで,どうするの?)

顔をあげて,凪の目を見つめる。

月の輝く,静かな夜の海みたいに,優しく凪いでいる。




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