溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。(漫画シナリオ版)
⚪屋外·コンビニ前(夜)



「なんで肉まん」




ウィーンと閉じる扉を背に,凪に尋ねる真理。

見上げた建物の緑と青の光に,真理が目を細める。

暗い外。

信号は赤で,木の揺れる音だけがする。

(ただただ星がきれい)

手をかざすように,見上げる真理。

(引き返すほど,肉まん好きじゃないよね,お腹が空いていたわけでもないと思うけど)

小さく首をかしげる。

凪の手の上でほかほかする小さな塊。

ただただ不思議に思う真理。



「真理と食べようと思って」



凪の大きな手が,ほくほくのそれを2つに割いていく。

(私……?)

じっとその動きを見つめる真理。

凪は楽しそうに笑う。



「真理はちっちゃい時も,そうやって僕の手を見てた」



真理が意味もなく,ふっと息を吸って,吐いた。

(凪と一緒にいたくて散歩した,帰りの話)

真理と凪だけが知っている,秘密のお散歩。

(私は,あの頃となにも変わっていないって事かな)

凪の悪気ない一言に,胸に切なさを甘く広げる。



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