コーンポタージュに一言添えて....。

一言。

 小さい頃、母が仕事をしている間は、ずっとひとりぼっちだった。
 学校から帰ってくると、夕飯だけ用意されていて、
 次の日曜日になるまで、
 母に会えなかった。
 今思えば、さみしかったのだろう。
 だから、仮病を使ったりして、
 母と一緒にいようと試みたが、
 それでも、母は仕事へ行ってしまった。
 けど、毎日ご飯が食べられているだけ、幸せだと思った。
 狭いけど、アパートに住めて幸せだった。帰る場所があってよかった。
 だから、私はしょうがないことだと、諦めることにした。
 
 小学2年生のある日のこと。
 学校から帰って玄関の鍵を開けるとき、
 となりの家の玄関に、同じ学校で私と違うクラスの男の子がいた。
 一度もしゃべったことはなかったが、話かけてみた。
 すると、家の鍵を忘れて、午後7時半まで家に入れないと言っていた。
 外も寒いのに、かわいそうだと思ったので、家の中に入れてあげることにした。
 けど、結局私も鍵を持っていなかった。
 家に入れなかった。
 彼は、長い間外で待っていたのか、震えていた。
 私も寒かったので、自動販売機で大好きなコーンポタージュを買った。
 たまたま、お金を持っていたのだ。
 そのコーンポタージュを彼に分けてやることにした。
 2人で飲んだ。
 今思えば、間接キスだった。
 それから、暇を持て余した私と彼は、宿題を2人で片付けた。
 7時半になって、彼の父が帰って来た時、
 私は1人になるかと思ったけど、親切に家の中で待たせてくれた。
 彼の父は、いつも宿題をしない息子が宿題をやったのは、
 私のおかげだと、喜んで、お礼をしてきた。
 それから、彼が持っていたセブンオーシャンのゲームをした。
 母と私だったら、私の方が強いので、勝てると思っていた。
 でも、彼の方が圧倒的強かったので、悔しかった。
 だから、次の日も次の日も彼の家に行っては、ゲームをした。
 母は私が毎日隣の家に行くので、
 迷惑をかけているんじゃないかと思って、挨拶に行ったが、
 むしろ歓迎してくれた。
 それが、嬉しかった。 
 
 2人でやるゲームはとても楽しくて、時間なんてあっという間だった。
 私たちは、セブンオーシャンのゲームが大好きだった。
  
 中学生になって、進路相談でどうするか考えていた。
 その時、この七海学園高校のことを知って
 私はセブンオーシャンの社長になりたいと思った。

 みんなを楽しませるゲームを生み出したい。
 その思いが、わたしをこの道へと動かしたのだ。
 

 








 私が目が覚めた時、それは3日後だった。




高熱を出して倒れていたところをのりくんが見つけてくれたと学園長は言っていた。



「潮田、おはよう」

 彼は言った。

でも、何だか気まずくて話せなかった。
だから、こくりと頷いた。彼は言った。



「好きだよ、潮田」


 彼は、真っ直ぐ私を見ている。たった一言なのに。すべてに許されたような気がした。

 そして、もう一度やり直そうとおもった。



 


翌日、私は本当の気持ちを伝えることを決めた。
そして、私は彼に言った。

「のりくん、あのね...前になんでこの学校に入ったのか私に聞いたでしょ?それはね、セブンオーシャンの社長になりたかったからなの。本当は結婚なんて興味がなかった。社長になれれば何でもいいと思ったの。パートナーが誰だって、のりくんのことだって。でも、今は違うの!もちろんゴールデンカップルになりたい。けど、思ったの。初めて挫折して、どうして私は、こんなに社長にこだわるんだろうって。私は、セブンオーシャンよりもずっとのりくんが好きになった。だから、もう社長にこだわるのはやめる。社長じゃなくても、ゲームは作れるし!」

のりくんは、驚きもせず冷静に言葉を返した。

「潮田、この学校にに来ている生徒のほとんどは、潮田と同じように社長になりたいから入学したのが本心って人が多いと思う。これは、当然のことだと思う。俺も実際に思ってるし..。けど、この学校のすごい所は、必ずパートナーと結びつくんだ。最初はみんなばらばらで、ここにきてなかったら会えなかったかもしれないくらいなのに...なのに、みんな少しずつ相手のことを好きになってしまうんだ。怖いよね?さすがマッチングシステムって感じ?ある意味呪いだったりして...?
それとさ、俺がこの学校に来た理由は、もう一度潮田と一緒にいたいって思ったからなんだ。小学校まで仲良くて、中学校でも仲良くしたかったけど、クラスとか違くて、俺1人が怖いから賑やかグループとつるんでたら、抜け出せなくってさ。
でも本当は、毎日潮田と話したかった。だから、潮田が七海学園入るって知って、一か八か試してみようと思った。
そしたら、見事に一緒になって、どんどん潮田のこと好きになって。ずっと目が離せなかった。だから、潮田が学校に行かないって言ったとき、めちゃくちゃ焦った。でも、またこうやって話せてよかった。ありがとう、潮田美波。」

のりくんは、そういうと私の唇を奪った。

私のファーストキスは甘かった。

「潮田、愛してる。」

「私も、愛してる、のりくん。」

「そうだ潮田......お前の怪力も含めて好きだぞ!」

「のりくん、ムード壊さないで!」

「ごめんごめんwww」のりくんったら!!!

でも、ありがとう。のりくん。
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