恋のウイルス溺愛不可避
「ぼーっとしてるけど、大丈夫?」
わぁ……いい香り。
先生だから、もちろん香水はつけてないはず。たぶんシャンプーのにおい。鼻をくすぐるせっけんの香りは、女子まで虜にしちゃう。
「先生の美しさに圧倒されてます……」
「ん、もー!ほたるちゃん、ほんとにかわいい!」
「きゃっ!?ちょっ、先生!?」
今のどこが……って、くそぅ、うらやましい。
引き寄せられた腕の中、むぎゅうって押しつけられたのは、たわわな感触。
「かわいすぎよ〜!もううち来ない?」
「それは先生のためにある言葉ですって!それに私には家がありますし……!」
「んん〜、でもご両親海外でお仕事されてるんでしょう?こんな可愛い子保護しなくちゃ!」
「ええ……」
確かにうちは、両親がふたりとも仕事の関係で海外に住んでいる。
決まったのは去年の冬。
お父さんもお母さんも一緒に行こう、心配だからって言われたけど、推し活したいからって必死に頼み込んで、今は1人暮らし。
「ラブウイルスも心配だし……」
「大丈夫ですよ」
「本当に?なってない?」
「今のところは」
そっと手首を持ち上げられて、内側をなでられる。
校内で会うと先生は、必ずラブウイルスに感染していないかをしきりに聞いてくる。
他の人に聞いてるところは見たことなくて、なぜか私だけ。
どうしてそんなに気になるのかって前に聞いたら、可愛い可愛い大事な生徒だからって。
周りがリア充ばかりだから、そうじゃない子は心配なんだと思う。
仲良くしてもらってるしね。