恋のウイルス溺愛不可避
***


「今のところ特になにもなさそうでよかったわ」

「そうですね!」


次の日の土曜日。
 
時間はお昼過ぎ。撮影はもうとっくに始まってるみたいだけど、ケガや体調が悪くなった人の訪問は今のところはゼロ。


「ごめんね、せっかく来てもらったのに」

「いえいえ、なにもないことが一番ですから!」


撮影はどうやら体育館でやっているみたい。

せっかくうちで撮影してるんだしって、気になってストーリーを検索してみたら、キラキラ王道学園モノですぐ画面閉じたよね。

羽林くんと可愛い女優さんのダブル主演の青春ラブコメ。

まぶしすぎる、私からは縁遠い生活。

憧れないわけじゃないけど、キスシーンとか甘い言葉を囁くシーンとかって、見ていて、はずかしい!ってなっちゃう。

前に家族でテレビを見ていたときそういうシーンになって、速攻冷蔵庫に逃げたよね。

視聴者に見てほしくて作ってるのは分かってるけど、どうにもいたたまれなくなっちゃう。


「主演って、羽林何くんだっけ?」

「あ、もしかして知らない感じですか?」

「うーん、イケメンは全く興味なくて。それよりもアイドル!かわいい女の子の方がよっぽど好き!」

「そうでしたね……」


私が御影くんファンであることは、雫先生はもちろん、友達にも話していない。リア恋だし、クラスにも御影くんが好きって子はいっぱいいるから、ライバル視されたりしたら怖い。

同担拒否って言葉もあるくらいだしね……。

争いは、だめ。平和が1番。


「あ、そういえば、ちょっと腕見せてもらってもいい?」

「出た、雫チェック」

「当たり前よ!大事な大事なかわいい生徒だもの……よし、今日も大丈夫そうだね」
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