恋のウイルス溺愛不可避


つり革に掴まっているものの、右から左からぎゅうぎゅう押され、グラグラ不安定な床。

バス通学は2年目だけど、いつまで経っても慣れなくて、どんより。

けど目の前には!


はああああ……朝から眼福。

ありがとう世界。ありがとう御影くん。

降車ボタンのすぐ下。貼られていたのは、我が推しである、槐御影(えんじゅ みかげ)くんのポスター。


こっち見てる!

目の前で!色気たっぷりに微笑んでる!

流し目!死ぬ!


「あなたの唇に最高の色気を」


女の人の肩を後ろから抱き寄せ、鮮やかな赤のリップを片手に、その唇へ這わせる。


女の人はキャミソールだけ。御影くんは上からいくつかボタンを外した白のワイシャツを着ていて。

はだけた隙間から見える胸板がまぶしい!

流し目といい、シャープな輪郭といい、かっこいいどころじゃない。

美しい……もはや神よ、神。


「……」


目の前に座るおじさんに、うわぁって目で見られてる。

人混みでぎゅうぎゅうなのに、にやけているからだろう。
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