恋のウイルス溺愛不可避
「好きな子とか彼女には絶対一途ってことじゃん!」
「そういう子の前だったら、めちゃくちゃ優しそうだし、甘やかしてくれそう」
「というか、キス上手そう」
とまあ、最後のは別にして、女嫌いの性格は、むしろ人気に拍車をかけている。
だから、彼を本気で想っている子、つまりリア恋は多い。
実は私もその1人。
御影くんがモデルとしてデビューした、去年の冬。
デビューと同時に、その美貌から抜擢された、一夜限りのスペシャルドラマ。
『もういや……っ、もう、無理……私なんて、私なんか……っ』
土砂降りの夕立の中、歩道橋で泣きながら空を見上げる女の子。
うつむく彼女にそっと傘を差しだしたのは、一人の男の子、もとい御影くんで。
『どんなに泣いたっていい、どんなに苦しんだっていい。でもそれだけは、言わないで。私なんかって……』
『っ、でも……』
『自分の存在までを否定しちゃったら……君を大切に思う人のこと、君を産んだ両親や大好きな友達のことまで否定することになっちゃうよ』
人間関係のことで悩んでいた最中、追い打ちをかけるように、おばあちゃんが亡くなって。
さすがに疲れた、もうすべてがどうでもいいくらいにまで落ちてしまっていた自分。
『今苦しいのは、つらいのは、君が乗り越えようとがんばっている証拠だから』
『自分自身だけじゃない、必ずだれかの力になる』
─────君のがんばりや笑顔を、心の底から必要としてくれる人がいるから。
雨上がり、虹がかかる空の下。
優しくほほえむ表情、その言葉に。
救われた。
自分自身を否定することだけはしちゃだめだって。
それは自分を産んでくれた両親に、支えてくれる人たちまでを否定することになるからって。
たまたまつけたテレビで、たまたま目に入ったワンシーン。
たったそれだけのこと、じゃなかった。
いくらセリフとはいえ、あなたの声に、表情に、救われた。
一歩前へ、背中を押してくれたんだ。