私と貴方の秘密の一年間
「あの、もしかして嫉妬ですか!?」
「なんで俺がお前に嫉妬しないといけねぇの? あぁ、そういう発想になるって事は、お前が嫉妬していたのか。納得だわ」
「…………否定が出来ないのが辛いです…………」

 あぁ、今度は楽しげに笑っている。この先生、実は結構笑うのかな、今まで見た事なかったけど。
 無邪気に笑って、子供みたい。何でこんな時にマスクを取っているんですか、恥ずかしいんですけど…………。

「んで、なんでお前は嫉妬していたんだよ。話してみ、聞いてやるよ」
「でも、醜い感情なので…………」
「あぁ、それを俺に言う? 醜い感情を持っていない人間なんていないんだよ。人の給料を簡単に下げれる奴や、落とした金を拾って自分の物にする奴とか。そういう人もいるんだよ、な? 醜い人間なんてごまんといるんだ、だから気にするな」
「…………ちなみになんですけど。お金を拾って自分の物にしたのって…………」

 あ、顔を逸らした。この人だな、金を拾って自分のものにしたの。わかりやす。

「…………大金じゃなかったらいいと思いますよ」
「……………………五百円は、俺にとっては、大金なんだが…………。警察に届けないといけないんだろうか…………」
「あ、い、いや!! 一般的な大金ではないので大丈夫だと思いますよ!!」」
「え、五百円は大金じゃないの?」
「私の話を聞いてもらってもいいですか?」

 これ以上何か言えば、先生の傷を深くしてしまいそうだ。先生の震えている様子を見ていると、何も言えなくなってしまった。

「あぁ、構わん。早く話せ」
「なんか、すいません」
「謝罪何て、いらねぇよ…………」
「なんか、すいません…………」

 煙草を咥えたかと思ったら、顔を覆ってしまった。もしかして泣いてる? 泣いてるの? え、本当に、すいません。
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