私と貴方の秘密の一年間
「まぁ、別に俺の話はいいんだが」
「いいんですか」
「んで、お前が悩んでいるのはなんだ」
平然と顔を上げて横目で見てくる。
先生はやっぱり、優しいなぁ。話しやすいように、しっかりと誘導してくれた。
これが誘導なのかわからないけど。
「私、先生は生徒の事なら何でもお見通しなんだろうなって思って。だから、もし落ち込んでいる生徒が居たら、私以外にも同じようにこうやって話をしているのかなって思ったら、なんか。気持がもやもやしてしまって。あと、普段の先生は何を考えているのかなっていうのも気になって…………」
悩みを全て出してしまった。ひかれてしまったらどうしよう、やっぱりこんな重い女とは一緒にいるのは辛いとか。
これはもしかして、別れ話になってしまうんじゃ。
先生の想いなんて無視していたから、ここで何か言われてしまうと、何も言えない。
「お前…………生徒の数考えてみろ」
「え?」
「担任だろうとな、三十人以上の生徒を一人一人管理なんか無理に決まってんだろうが。つーか、管理する必要はない」
「いや、そこはあるでしょう」
「それに、教師が絡むと話が大きくなる可能性があるから、俺は極力関わらん。めんどくさいから」
最後の言葉がなければ、生徒の事考えているいい教師だったんだけどなぁ。
「なら、私にこうやって話を聞いて来るのは?」
「原因がわかりきっているから」
「…………あー…………」
確かに。これは先生しか解決出来ないから、話を聞いてくれないといけないわ。ここまでわかっているのもすごい。
「それと、俺が普段何を考えているかの質問だが。逆に、何か考えていると思うか?」
「その場で出来る自殺方法とかなら、考えてそうです」
「…………そうだな」
「否定してください」
煙草の煙を私と逆側に吐いてる。そこはしっかりと気遣ってくれる優しい先生。まぁ、本当に気遣ってくれるなら、煙草を生徒の前で吸わないだろうけど。