私と貴方の秘密の一年間
「先生…………」
「何だ?」
「今日も、自殺しようとしました」
「なんで?」
「カッターに、赤黒い何かが…………」
「…………」
あ、無言でこっち向いた。それはどういう感情の顔ですか、真顔なのか焦っているのかわからない顔を浮かべているんですが。
「…………きゃーえっちー」
「棒読みでありがとうございます。それで、これはなんなんでしょうか?」
「…………君の笑顔は今素晴らしいほど輝いているよ」
「ありがとうございます。それで誤魔化せると思いますか?」
「いえ」
「きりっとした顔で返事しないでください。それより、これってやっぱり自傷行為を?」
「…………」
あ、目を逸らした。そこまでして何か思い悩んでいるのかな。でも、先生飄々としているというか、普段は普通過ぎてわからない。
何かあったのかと聞いてもきっと、教えてくれない。教師だから、大人だから。多分、教えてくれないんだろうなぁ。
「なぁ、金糸雀」
「え、なんですか?」
「お前は、俺を死なせないよう監視するために俺の彼女になったんだろ?」
「好きだから告白したんですが、なぜそのような解釈になるのでしょうか」
「ならよぉ、今、この瞬間、俺は無性に死にたいと思っている」
「人の話を聞かないでものすごい深刻そうな話に移行しないでください。でも、何があったんですか?」
机に突っ伏してしまった先生の袖の隙間から見える包帯。少し赤く滲んでしまっている、深く切ってしまったのだろうか。もしかして、話してくれるの? 先生の体に傷つけた原因を。先生をここまで傷つけたのは、誰。先生をここまで追い込めたのは、誰? 何があったの? 許さない。先生を傷つける人は、私が許さない。
早く、教えて? 私が、先生を守ってあげるから――……
「…………煙草…………吸いたい…………」
「…………ん?」