私と貴方の秘密の一年間
手を、繋ぐ事は駄目だろうか。先生はあまり人に触れられたくないみたいだし。
あぁ、もし他の人に見つかってしまったら、先生の教師人生も終わってしまう。でも、繋ぎたい。先生の、少し冷たい手を温めてあげたい。
「ん? 何見てんだ?」
「…………いえ、なんでもありません」
駄目だ。これ以上求めてしまえば、私はまた失敗してしまう。また、取り返しのつかない事態になってしまう。それだけは避けないと、先生にまで嫌わてしまったら私──……
『お前、──だよ!!』
「……──っ!」
「お前も、手。冷たいじゃねぇか」
「え、あ……」
先生が、私の手を握ってくれてる。しかも、指通しを絡め…………これって、世間一般的に言う、恋人繋ぎ。
「今、俺達はプライベートだ。立場とか関係ない、このくらいはいいだろ。恋人通しなんだからよ」
「っ!!」
黒いはずの瞳がキラキラと輝いて、白い歯を見せて笑う先生。思考を先回りされた気分だ。
「ん? もしかして、嫌だったか? まぁ、こんなおっさんの手を繋ぐなんて嫌か」
「今先生が手を離したら、私は指を切り落とします。そして、先生を落ち込ませてしまった事の罪を一生かけて償いまっ――……」
「やめろ、お前は本当にやりかねないから」
「やりますよ? 当たり前じゃないですか、有言実行です」
「やめなさい」
あ、少しだけ掴む手に力が入った。
「…………なに」
「えへへ、ありがとうございます」
「……………………はぁ」
このまま、この時間が続けばいいのに。こんな、素敵な時間が。