私と貴方の秘密の一年間
うわ、屋上の柵を乗り越えたんだけど、こんなに高いんだ。下を覗き込んでみると、事務員の人が米粒ぐらい小さいのを確認できる。
 風に煽られるな、いつ落ちてもおかしくない。
 この学校は三階建て、落ちたら終わりだろう。

「何やってんの、危険だから早く戻れって…………」
「先生、選択肢を今から言います」
「俺は選ぶなんて言ってねっ――――」
「一つ目、このまま私と一緒にここから飛び降りる」

 指を一本立てて言うと、先生は珍しく驚いて目を開いている。そんな顔も出来るんですね、かっこいいです。

「二つ目、終わるはずだった人生を私に捧げる」
「おい」
「三つ目、卒業まで、私の彼氏になってください」
「――――は?」

 柵に手を置いて、私を見つめてくる。何と答えを出そうか考えているのか、驚きすぎて思考が回っていないのか。どっちにしろ、先生が動かなければ私は動きません。

 ……………………先生ってまつげ長いな、色白だし。普段は長い前髪とマスクで陰キャ丸出しだから気づかないけど、結構顔は整っていると思う。

「…………あまりそんな事を言わない方がいい。どうせ、死ぬ勇気なんてないんだから」

 …………ほう、私に勇気がないと申しますか九頭霧先生。
 まぁ、そうか。私は先生にとって一生徒でしかない。ただの自分のクラスメイト、その程度の認識だろう。でも、私は違うんだよ、先生。

 私は、もう先生しかいない。先生が居なければ、私はもう――……

「もし俺がそれを本気にしたらどうする。一の選択肢を選んだらどうするつもりだ。勇気がないのなら、そういう事をいっ――――」


 ――――――――ピョン


 先生がいない世界で生きるのなら、死んでも構わない。そう、思っている。


 わぁ、落ちる時って体に本当に浮遊感があるんだ。このまま下に頭からおちっ――……
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