俺が、好きになっちゃダメ?
「席離れちゃって残念だったね……」
「うん、しょうがないけどね……」
休み時間になり、わたしと夏芽は教室の窓際で横に並びながらそう言葉を交わし合う。
まあ、これは運だからね。
席を変えてもらうには、視力の関係で後ろでは見えない、といったような正当な理由じゃないと先生は許してくれないもの。
わたしと夏芽が席を変えたいことでは、ちっとも視力とは関係ないんだし。
先生から見たら、わたしと夏芽はただの友達以外の何でもないので、「分かり合える存在だから」なんて言っても、絶対近くになんて変えてもらえない。
なんとか、気を紛らわすようなことってないかな……。
あっ、そうだ!
「ねぇ夏芽! 明日は土曜日で、お父さんもお母さんも用事あるから、わたしの家でゲームやらない!?」
「うん! やろうやろう!」
夏芽を家に呼ぶのは、久しぶりだ。
わたしの提案で、夏芽が笑顔になってくれる。
この瞬間が、わたしにとって幸せなことの一つだ。