俺が、好きになっちゃダメ?
「ちょっ……待って、俺、マジで衝撃なんだけど。毛利さんって、彼氏いたの?」
「らしい」
俺も、毛利の彼氏だったレイの顔も見たことなければ関わったことだってないから、なんて言いようもないんだけど。
「そりゃあ、毛利さんだってあんなに怒るよな……。大切な人を殺されたってことなんだろ?」
「そう……」
「それなのに事情も知らず、こうやって話が広がってんのは気の毒だよな。……けれど、みんなに理解してもらうために、毛利さんが怒ったわけを無責任に教えるのも、違うよな」
なぎちゃんの言っていることは、正しい。
誰にだって、知られたくない過去というものがある。
毛利だって、俺には話してくれたけれどあれは俺が電話をかけたから答えるしかなかったようなものだと思いし、それを大勢の人に知られるのは嫌な可能性だって低くない。
「おーい! 木嶋に胡桃! 何そこでグズグズしてんだ!!」
離れたところで、先輩がギャーギャー騒いでいる。
俺ら2人は、急いで先輩のところへ走った。