俺が、好きになっちゃダメ?
「何?」
「ちょっと話をさせてくれる? 玲のこと」
「うん」
なぜだか、俺は毛利の苦しみを取れるんなら取ってやりたいと思ってしまった。
「玲、わたしの知らない時にここから死んだの」
ざぶん、ざぶん。
海の波が行ったり来たりとしている。
「わたし達、いつかこの海の近くに教会ができればいいのにって話をしてた。そしたら、結婚式をここで挙げられるのにねって」
夕陽に照らされて、青いはずの海はすっかりオレンジ色に変わっている。
昼は青くて、夕方はオレンジに光り輝く。まるで、海のイルミネーションみたいだ、と思った。
「今考えると、結構バカなこと言ってたなぁ。教会がこの辺りでできないなら、ハワイで結婚式挙げるのもいいな、なんて言うこともあったし。お財布がすっからかんになっちゃいそう。いや、それどころか足りないだろうね。アハハ」
毛利は思い出を語ってすぐ、そう笑った。
けれど、俺は笑えなかった。
毛利は、無理して笑っているようにしか見えなかったから。
彼氏をあんな風に失って、辛くないはずがないのに我慢なんかして。